イノシシ

急な話だけれど、
実家でイノシシを飼うことになった。
すでに家にいる。
しかも、親子。

イノシシといっても、大きくない。
ミニブタのふたまわり大きいサイズだ。
親イノシシ(以後、オヤシシ)は家の中に放たれ、
1階と2階を自由に行き来している。
ベビーイノシシ(以後、ベビシシ)は、
フタつきのクリアケースに入れられている。
もちろん、フタは空けてある。
全部で8匹。多い。ぷぎゃぷぎゃ言うにもほどがある。

正直、世話がものすごく大変である。
ベビシシは結構寝ているので、ミルクの時だけクリアケースから出して、
オヤシシの乳をあげればいいのだが、
オヤシシは散歩に行かねばならない。

散歩にはリードを使う。
イノシシを散歩させている人を、私は見たことがない。
前に雨の日、駅前で、
レインコートの代わりに、
青いビニールシートをロープで胴体に巻きつけられている柴犬を見たことがあるが、
イノシシの散歩は、おそらくそれ以上の衝撃であろう。

オヤシシの全力ダッシュをなめてはいけない。
速い。めちゃちゃ速い。
ペットの散歩初体験な私は、
散歩コースを事前に決めていたわけでないのだが、
オヤシシにまんまと流され、
近所といえども、知らない街に来てしまった。
知らない店がいっぱいある。
回転ずしならぬ、回転刺身屋。
刺身が回転している。店構えからみて、どうやら老舗のようだ。
アメリカの輸入雑貨を売っている店。
こんなにかわいい店が近所にあったのか。

オヤシシの速さは留まることを知らない。
私は、この先がとても不安だ。
イノシシを飼っている人なんて聞いたことがない。
自分の、現状でもままなっていない学業とイノシシの世話を果たして今後、両立できるのだろうか。

ていうか、ベビシシがオヤシシになったら、
イノシシを9匹連れて散歩するのか?
もう、引っ張られすぎて、散歩中に空を飛べるかもしれない。
そしたら、逆にうれしい。

そんなことを思いながら、オヤシシと全力ダッシュしていると、
ふと、
「でも・・・これなら、毎日走るきっかけができる。
やせられる。それはちょっとうれしい。」
と思った。

そして、目が覚めた。
立ちあがり、
一応、家を見まわしたが、
1階にも2階にもイノシシなどいなかった。

自分でも、鮮やかな夢だったと自負している。

とりあえず、今後イノシシを飼うチャンスがあっても、
断念するように心がけようと思う。
イノシシがいなくても、ランニングをはじめたい。
足が寒すぎて、おなかいたい。

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mixiで前に書いた日記。
結構気に入っているのだ。
いのししを飼ったら大学院は卒業できなかったな、うん。
やらなければならない夜ほど、こういう無駄なことをしてしまう。
いやんいやん。