マジックボックス

学生の頃に唐突にはじめて、走り去るようにしてやめた、塾講のバイトで、最初に研修があった。

5人位の、塾講バイトはじめます!チームで、お互いの授業を見せあうのだが、その中に、彼はいた。

何でも、アメリカの大学に留学して、宇宙工学を学んでおり、ほんのつかの間帰国する機会をみて、塾講のアルバイトをやろうと思ったらしい。

彼をのぞく、私を含めたほかのいもっ子4人は、可もなく不可もない授業を発表し、淡々と進んだ。

そして彼の番。彼は英語の授業をしたのだが、教育要領なんて、グレートキャニオンの谷底に葬り去ったぜ!的な、もう俺オリジナルの授業を始めた。

もう何年も前の話だし、詳細は忘れてしまったが、彼の授業テーマは関係代名詞で、英文の関係代名詞なるWhatだとかWhichだとかが入るところに、しろぬきの□を書き、
「関係代名詞、つまりそれは、マジックボックスなんだぜ!」(発音抜群)
というような趣旨の授業を繰り広げた。

もう、いもっこ4人は、俺オンステージ!のアメリカンスタイル授業に息をのんだ。発音もいいし、マジックボックスの話もわかりやすい。

彼は、授業中、テーマのマジックボックスを何度もも連呼していた。

しかし、なぜか、授業内容が頭に入ってこない。
それは、なぜか。
そう、それは、彼のチャックが全開でワイシャツがチャックから、ハウアーユーしているのだ。

私は心の中で、
「俺のマジックボックスが全開。」
とつぶやくのであった。