サボテンの添え物

ベランダで日光浴をしながら、
マライア・キャリーホイットニー・ヒューストンのコラボ曲を聞いた。

これは、小学校の時の運動会でやった組体操のBGMだった。
たしか、プリンセスオブエジプトのテーマ曲。
当時の先生が好きだったのかもしれない。

この曲はすごく好きで、
適当な歌詞を作りながら、
マライアとホイットニーを一人二役しながら、
情感をこめて歌い上げるとそれなりに達成感を得られる曲である。
お風呂で歌ったりするととても気持ちいいのでおすすめである。

しかし、
この曲にのせて披露した組体操の方は、
私はあまり好きでなかった。

私はもともと、体がものすごく硬くて、力もない。
組体操は自他ともに認める不得意分野だった。

なぜ、組体操をやらなければいけないのか、
やって何になるというのか、
なぜ、自分の手のひらや膝小僧に校庭の砂がめり込む理不尽な痛みに耐えなければならないのか、
ブリッジが美しくできることに何の価値があるのか、
いろんな理不尽と向き合いながら、練習に励んだ記憶がある。

しかし、実際に練習に励んで、
どのような技ができるようになったか、
本番で披露したかは全く記憶にない。

ただひとつ記憶にあるのは、
サボテンという技ができなかったということ。
サボテン、ご存知だろうか。
二人一組で下の人が上の人のすねあたりを持って支えるあの技。
あの上の人の役も、下の人の役も私にはできなかった。
サボテンをきれいにみんなが披露している中で、
サボテンができなかった者たちが寄せ集められ、
なんかサボテンの添え物のような、謎のポーズを三人一組ぐらいで作らされた、なんとももの悲しい記憶は、今も大切にある。

今となっては微笑ましいよき思い出である。
サボテンなんかができることよりも、
複数の理不尽を胸にかかえながら、
なんとかかんとかして、組体操という事象を、それなりに自分をいなすことで乗り切ったことに壮大な価値があるのだ。

ベランダで、
世話しなくマライアとホイットニーの二役をこなして歌い上げながら、そんなことを思い出して、春の昼下がりに微笑んでいたのであった。

思い出の一つとして、
添え物のポーズを覚えておけばよかったなと思う。